『 誠実な恋人 』

Kousuke*Ayumu



「今日が何の日か知ってるか?」
「ヴァレンタイン氏が殺された日だろ」
「予想してたが可愛くない回答だなオイ」
「そもそも可愛げなんてモノを俺に求めるな」
「日本の若者なら『恋人の日v』とか応えてチョコレート渡すとかさ…」
「そんな寒い真似するか」
「だよなぁ…」
 寒空に白い息を吐いて香介は空々しいくらいに残念がっていた。
「チョコレートなら竹内とかから貰ったんだろ?」
「おー。これでもモテるのでクラスの女子からも戴きましたとも」
「ならいいだろ」
「よくねーよ。本命から貰えずしてなにが幸せなバレンタイン」
「本命云々置くとしても貰えずに嘆いてる奴から見れば羨ましい限りじゃないか」
「幸せなんて人それぞれ。他人と比較するもんじゃないだろ。それで、お前は?」
「は?」
「いくつ貰った?」
「竹内とあいつから。他は断った」
「義理は、だろ。靴箱、机、ロッカー内の物は?」
「……いちいち数えると思うか?」
「まさか捨てるはずも無し。鞄の中に理緒達からの除いていくつあるのか。楽しみだな」
「………。欲しいならやる」
「女子の念のこもったチョコくらい食ってやれよ。気持ちに答えられないんだからせめて」
「珍しくまともだな」
「つーか応えられたら困る」
「………誠実なのか不誠実なのか分からない奴だよな、お前も」
「歩に関しては誠実なつもりだけど」
「どこがだ」
「気持ちの行き違いか。辛いなぁ。慰めてくれ」
「御免被る」
「お前だんだんあしらい方がラザフォードに似てきたぞ」
「やめろ恐ろしい」
 無駄口を叩きつつ誠実な2人は仲良く鳴海家へ向かって歩いていた。





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