『 赤く咲く、 』
Michel*Ophelia
手の中に納まったカードに思わず笑みが零れる。
誰が彼女にこの日の意味を教えたのだろう。彼女が今日という日の意味を正確に理解しているのかどうかは甚だ疑わしいが、解らずとも、手の中のこれが自分に幸せを与えてくれるということは確かだ。
「開いても?」
尋ねれば、こくりとひとつ首肯が返る。
ただ真っ白な厚手のカードの中には、この日を祝う言葉が一文。
それもまた飾り気のない黒インクで。
愛を祝うカードにしてはあまりに素っ気無いそれが、なんとも彼女らしい。
「ありがとう、オフィーリア」
いつもより近い場所にまで下りてきていた彼女に告げると、少しだけその口元が綻んだ。
ことり、と彼女が首を傾げると、その髪に結ばれていた赤いリボンが揺れる。
「…そうだ」
ポケットから細い赤のペンを取り出して、ミシェルはそれを彼女に差し出した。
「………?」
「それで、君の好きな花をひとつ、ここに描いてもらえませんか?」
カードの指すと、不思議そうな表情を浮かべながらもオフィーリアは頷いた。
そしてカードの隅に、彼女の好む小さな赤い花が一輪、咲いた。
窺うようにオフィーリアがミシェルを見る。
「キレイです」
ありがとう、と。
もう一度告げたミシェルに、オフィーリアもまた嬉しそうに頷いた。
モノクロームのカードにひとつだけ。
赤く咲いたそれは、なんだか酷く甘い色に見えた。
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