不眠不休とまではいかないものの、それを一日どころか数日それを続ければ身体が何かしら訴えを起こしていても不思議ではない、むしろそれが普通なことだろう、と思わず嘆きたくなるくらいに疲れた様子で部屋に戻ってきたイザークに、ディアッカは呆れた眼差しを向けた。
「お疲れ様」
「…………。」
ソファにもたれかかっているディアッカを無言で睨むと、イザークは手にしていた端末を机において、さらに何か操作し始める。
「もしかしてまだ終わってないわけ?」
呆れたまま、そう続ければさっきよりもきつい一瞥が下される。
言わずもがな答えは『Yes』なのだから邪魔をするな、と言いたげに。
それきり画面に険しい表情を釘付けにしたイザーク。画面の灯かりに照らされた顔は陰影がはっきりして、余計に憔悴の色を濃く見せる。
「イザーク」
返事は期待していなかったが、予想通り無視されればやはり虚しい。
「イザーク。ちょっと休めよ」
これは忠告。
「イザーク…休まないと逆に効率悪いだろ?」
これは警告。
「………イザーク?」
最終警告。
タイムオーバー。
深々と息を吐いて、無視し続けてくれたイザークの肩を椅子ごと少し強引に引く。
「!なにをっ…ん」
怒りのまま叫びかけた口を塞ぐ。もちろん口で。
歯列を割って、上顎を舐めて、少し引きつったような反応を示す口内で抵抗しようとする舌を更に絡め取る。なにか抗議してるのだろうが、すべて喉を鳴らすような言葉にならない音になって消える。
その片手間でキーを叩いて画面を終了させ、勝手にデータバックアップを取り始めるそれを放ってディアッカは本格的にイザークを落としにかかった。
椅子の背に肩を押しつけていた手を首からうなじに回して逃げられないように首を固定して、少しスペースのある椅子の座面に肩膝を乗せる。右足は床で椅子が動かないようにしっかり固定して、あとの片手は自分の安定の為にと支える場所を探したらイザークの腿の上に落ち着いた。
抗議の声が艶めいた吐息に代わり、抵抗していた手足から力が抜けてさらに数十秒後、やっとディアッカがイザークから離れた。
「今日は終わりにしとこうぜ?」
半分以上確信的な問いに、息も整わず、怒鳴り返す気力も残っていないイザークは涙腺を緩ませたまま人を殺せそうな視線をディアッカに向けたが、その状態でいくら睨めつけたところで無駄である。
「……頷かないと、ベッドが遠くなるけど?」
「っくそ!」
小さく毒づいたイザークのそれを愛ある了承と取るのは自分くらいだろう、とディアッカは笑った。
イザークが首に回した両腕に答えるために、まずはバードキスから仕切りなおしである。
すべては、快適な眠りの為に。
突発的に夜中に書いた意味のないお話。勢いとなりゆきに任せるとこうなる、と。