簡易ベッドに座ったキラから微かに溜息が漏れる。
2人しかいない部屋でその微かな音は紛れることなく届く。
「どうしました?キラ」
「ん…なんでもない、よ」
俯きぎみの顔を少しだけ上げて、苦笑に近い微笑みをラクスに向ける。それに似たような表情を返して、ラクスはキラの傍らに同じように座った。
「言えませんか?」
「………つまんないことだよ」
「キラの言葉に、つまらないものなんてありませんわ」
そういう意味の"つまらない"として使ったのではない。それを知っていながらラクスは否定し、キラはそれを受け止めた。
「…ホント、くだらないことだけど」
笑みを消して、ラクスに視線を合わせることはせずに独り言のようにキラは呟く。
「悔しい、のかな」
「『悔しい』?」
「うん……」
頷いて、キラは一度黙った。その先をどう続ければいいのかを悩むように。
なにも言わずにその先を待つラクスに押されるように、キラは少し笑みを取り戻して冗談めかして言葉を続けた。
「僕にとってラクスは"光"だったんだ」
思わぬ言葉。しかしラクスはまだ黙ってそれを聞いていた。
「僕だけじゃなく、きっとプラントの"光"だったんだ。なのに、あんな風に『使って』、こんな風に追いやってることがどうしても…」
悔しいんだ。
キラはその言葉を続けることはしなかったけれど、不自然に途切れたその先を欲しがることはせず、ラクスはキラの肩に寄りかかった。
「それだけで十分ですわ」
「……僕が、嫌なんだよね」
ごめんね、と言うキラにラクスは首を振った。
「バルトフェルドさんが言うように、『これが政治だ』って言われればそうだけど」
「でもキラは政治をなさっているのではありませんから。カガリさんのことも…」
「うん…。結局僕の子供っぽい我儘かな、って思わないでもないんだけど」
「本当にそう思っていますか?」
ラクスらしい問いに、キラは笑ってそれを否定した。
そして全てを吹っ切るように微かに頭を振って、照れるように「ありがとう」と小さく囁いた。
「…ったく。こんな時にアスランなんでいないかな…」
責任転嫁のような、作った怒り声にラクスは忍び笑いを漏らす。不器用な言葉の端に心配を見出して。
種運命17話『戦士の条件』より妄想。